これはあくまで一例ですが、
と、本気アピールで切実に訴えかけても、なかなか相手は了承してくれない時がほとんどだと思います。
ですが、
今月ピンチなんでちょっとだけお金貸して…!
と付け加えると、お金を貸してもらえる割合が高くなると言います。
アンダードッグ効果
これは決してお金の貸し借りだけではなく、
- 仕事
- 売買
- 恋愛
などでも割と頻繁に活用されている一種のテクニックで、心理学的には
と呼ばれています。
アンダードッグ効果とは…?
英単語の「アンダードッグ」は、
- 負け犬
- かませ犬
というニュアンス的意味も持ってはいますが、本来の意味での「アンダードッグ(Underdog)」は、
のことを指しています。
溺れている犬を助けたくなるような気持ちのことで、「同情の心理効果」ともされているのが「アンダードッグ効果」です。
アンダードッグ効果現象
アンダードッグ効果は、アメリカの政治界で時おり起こる現象を指すのに使われたのが始まりとされていて、
現象アメリカ大統領選挙や州知事選挙前の事前勝敗予測などで、不利と報じられた候補者に多くの同情票が集まり、結果的に不利と報じられた候補者が逆転勝利する
という現象を分析したものでした。
これは例えば、
- 金満チーム vs 弱小チーム
が試合をする際に、金満チームを応援するよりも不利と目される弱小チームを応援する人の方が増えるのもアンダードッグ効果の一種です。
また、オリンピックなどで稀に1位の選手より最下位の選手の方が声援が多くなる時が見受けられますが、これもアンダードッグ効果とされています。
加えて、そのチームや選手が抱えている
- ハンデ
- お国事情
- 個人的内情
などがある程度見る側にも共有されていると、より一層アンダードッグ効果が引き起こされやすくなる傾向にあります。
一般的にこれらは無意識的に働くものですが、心理学的には「アンダードッグ効果」は、
- 無意識的アンダードッグ効果
:同情の心理作用 - 意識的アンダードッグ効果
:あえて自分の弱みや欠点をさらけ出すことで、相手から善意や援助行動を受けやすくする心理作用
の両方のことを指してます。
無意識的・意識的に別れてはいますが、効果に違いはほぼありません。
アンダードッグ効果は「同情の心理効果」とされていることから、日本では
- 判官びいき効果
- 負け犬効果
とも呼ばれています
なぜアンダードッグ効果は有効なのか?
一般的に人は、頭でじっくりと考えるよりも気持ち的に感じたことを優先したりするなど、論理的なものよりも感情的な事柄に流されやすい傾向があります。
ちょっと専門的な話にはなりますが、これは人の感情の喜怒哀楽が、脳の「大脳辺緑系」と呼ばれる部分で感じるためだとされています。
(下記画像の◯部分)
大脳辺緑系は、
- 生命維持
- 本能行動
- 情動行動
に多大な影響を与えるとされていて、脳全体の割と中心部に位置しています。
論理的な思考を司るとされる前頭葉部分よりも内側に位置しており、
- 視覚
- 聴覚
- 嗅覚
- 味覚
- 触覚
といった五感の伝達距離が前頭葉よりも短いため、その分感情的な事柄が優先されがちになると考えられています。
なので、
- 見たもの
- 聴いたこと
- 匂いを感じたもの
- 食べたもの
- 触ったもの
などから得た情報は、まず感情的な側面で捉えがちになると言います。
- 弱い(と知っている)チームが強いチームと戦うなら弱いチームを応援したくなったり、
- 最下位なのに頑張ってる姿を目にしたら心打たれやすくなったり、
することも、脳の構造的役割としてある意味仕方のないことだと言えます。
この脳の構造的役割をある種逆手にとって活用しているのが意図的に用いられるアンダードッグ効果で、
- 弱み
- 欠点
- 被害的立場
などを相手に伝えることで、相手の「哀」の感情を強く刺激して同情を引き出す効果があるとされています。
アンダードッグ効果が効く範囲
アンダードッグ効果は、脳の構造的機能により論理的な思考よりも感情的な部分に強く訴えかけられるため、
と聞いた後に、
とお願いされると、本当に財布が盗まれたかどうかの事実は別として、実際にお金を貸す人の割合が増えます。
また、ある検証では、
アンダードッグ効果の検証最初に
と伝えた後に、
や
といったお願いをしたところ、断るより承諾してくれた人の方が多かったそうです。
- 財布が盗まれたこと
と、
- ノートを見せること
- 仕事を変わること
とは全く関係ないですが、関連性のないお願いであっても同情心を引くことができれば相手の同意を得やすくなる傾向にある興味深い検証結果となっています。
この検証結果は、前述の脳の部分でも触れましたが、「哀」的な同情心が優先され論理的な考えがしづらくなっている現れでもあります。
アンダードッグ効果活用時のポイント
もし仮に、相手の同意や協力を得るために意図的にアンダードッグ効果を使う場合、大前提として最も大事なことは、
ポイント
1対1で話す
ことです。
人がたくさんいる状況では自分にお願いされているのか曖昧になりますし、少人数だとしても
といった意識が生じやすくなります。
弱みや欠点などを、
という認識を持たせる意味でも、1対1で話すことがアンダードッグ効果を意図的に使う上では大前提となります。
余談:
社会的手抜き効果
ちなみに、余談ではありますが、人がたくさんいると一人ひとりが出す力や真剣度が減ることが分かっています。
これは「社会的手抜き効果」と呼ばれるもので、
社会的手抜き度の実験たとえば綱引きをする場合、
1対1で対戦したときに出すひとりの力を100%
とすると、
- 2対2だと90%
- 3対3だと85%
- 8対8だと50%以下
しかそれぞれ力を出さなくなってしまう傾向にある。
そうです。
この「社会的手抜き効果」が影響を与えないためにも、相手の協力を得るために意図してアンダードッグ効果を使う場合には、必ず1対1で話をすることが必須となります。
アンダードッグ効果の使い方
アンダードッグ効果を意図的に用いる時には、相手と1対1の時に自分の
- 弱み
- 欠点
- 被害的立場
などを伝える(または、さらけ出す)ことで、相手の喜怒哀楽の「哀」的感情を強く刺激して同情を引き出すことが効果的とされています。
というよりも、
今月ピンチなんでちょっとだけお金貸して…!
と言った方がお金を借りやすいですし、アンダードッグ効果を発揮しやすいということも脳の構造的部分を交えて見てきましたね。
これに加えて、アンダードッグ効果は自分の
- 弱み
- 欠点
- 被害的立場
などをさらけ出すことが大切になってくるので、話す内容が
- 自分自身のこと
- 自分の身に起こったこと
であることも重要なポイントとなります。
ちょっと極端な例ではありますが、
といった関節的なことでは、アンダードッグ効果は発揮されづらくなります。
ですが、
同情を引かなきゃ…
という意識が強く働き過ぎて、割と関節的な事由を挙げて同情を引き出そうとしているケースも多いみたいですので、使い方にはくれぐれもお気をつけくださいませ。
また、自分自身の
- 弱み
- 欠点
などを敢えてオープンにすることは、アンダードッグ効果に加えて、人が潜在的に持つとされる、
- 返報性の原理
:相手が自分のために何かしてくれたら、自分も相手のために何かしてあげたくなる心理作用 - 自己開示の相互性
:プライベートな話をされた側は、自分もプライベートの話をしがちになる心理作用
にも働きかけるため、非常に効果的なテクニックのひとつとなっています。
なので、
といった方がアンダードッグ効果は発揮され、その後に続くお願いも受け入れてもらやすくなります。
さらには、
といったような、
過程行動
(努力、健気さ、親切心)
×
マイナス結果
(失敗、うまくいかない)
が組み合わさった弱みや欠点をオープンにすると、善意的アンダードッグ効果が受けやすい傾向が強くあります。
アンダードッグ効果は…
自分のお願いを受け入れやすくする最終手段として、自分の
- 弱み
- 欠点
- 被害的立場
を1対1で伝えることで相手の同情心に訴えかけるアンダードッグ効果をみてきました。
また、無意識でも意識的でも、
ことができればアンダードッグ効果は発揮されます。
なので、仮に意識的に使う場合でも、変な話それが演技やフェイクだと相手にバレなければ効力を発揮してしまいます。
見え透いたウソだったり後からバレる内容のものでは信頼を失うという意味での危険性は高いですが、ウソも方便と巧みに織り交ぜていくことで自分が望むより良い結果を得やすくなる可能性は大なので、
(最終手段として)
こうゆうのもあるんだな…
といったニュアンスで心に留めて置くのも良いかもしれません…。