2005年8月14日、乗客と乗員あわせて121名全員が亡くなったギリシャ航空史上最悪の事故「ヘリオス航空522便墜落事故」が起こりました。
この事故は世界各国で大々的に扱われ、特に欧州では連日トップニュースで事件の詳細や原因究明などの続報が随時伝えられていました。
その日も墜落事故関連のニュースが流れている中、世界に向けて発信している某TV局が、新たな情報として、
というニュースを速報として流しました。
が、後日様々な検証を行っていく過程で、このメール自体が嘘でニュース速報も全くの誤報だということが分かりました。
この誤報を流してしまったのは、世界的に知名度も権威もある通信社で、当然ニュースとして報道する前に様々なチェックが行われています。
誤報となった速報に関しても充分とは言えないまでもチェックは行っていたのに、結果としてどうして誤報を流してしまったのか…?
誤報を流れてしまった原因
誤報を流してしまった通信社が様々な角度から原因を探ったところ、いろいろな要因がある中である専門家は
ということに注目しました。
その「関係者と思われる人物」は、メールを受け取ったとされる(実際には受け取っていない)いとことは知り合いではあったものの、”メールを受け取った”という内容は、噂が噂を重ねた空想でしかありませんでした。
では、なぜ通信社はこの空想話を信じてしまったのか…?
相手を信用させてしまうフレーズ
「たまたま」
例えば、あなたの周りに浮気性の旦那と疑り深い妻の夫妻がいるとします。
ある日、疑り深い妻の方から
と相談を持ちかけられました。
しかし、相談してきた妻が疑り深いことも知っているあなたは、妻に話を合わせながらも
疑り深さからくる誤解じゃないか?
という考えも同時に湧きやすくなります。
が、妻から相談をされた時
と聞かされたらどうでしょう。
内容としては、
ということに変わりはないですが、聞いた心象的に
「え?また?」
と割と疑いなく受け入れがちになり、自然と話の信憑性を高く受け止めてしまう傾向があります。
「たまたま」の効果
など、
- たまたま
- 偶然
といった言葉が付くと、情報元は話をした本人じゃなく他にあると捉えますし、その情報の正確性自体が薄くなり、
第三者が言っているのなら本当なのかも…
と信じやすくなる傾向があります。
さらには、情報の発信元が
- どこから出た話なのか?
- 誰がいい出したのか?
自体を全く知らなくても信じやすくなってしまう傾向が強くなるそうです。
普段から情報の信憑性には注意しているような前述の通信社でさえ時に誤認してしまうので、
- たまたま
- 偶然
といったちょっとした言葉ながら、相手を暗に信用させてしまう効果は大きいとされています。
聞き手に安心感や価値を与える「たまたま」
上記の使われ方とは別に、
- たまたま
- 偶然
といった言葉は、心理学の世界では以前からある種の「魔法のことば」とされてきてるそうです。
「たまたま」という単語が言葉に付くだけで、人は安心感や価値を見出されやすくなる
ということが指摘されているためです。
安心感を与える「たまたま」例
ちょっと極端な例ですが、片道2時間くらいの距離に住む友人があなたの家に訪れた時、
と言われるのと、
と言われたのでは、同じ「来てもらった」でも申し訳なさ度合いは変わってきます。
後者の方が申し訳ないって気持ちは軽くはなりますね。
これは営業マンがよく使っている手法ですが、
が重なると、人は暗に安心感を覚える傾向にあるとされています。
安心感を与える「たまたま」の使い方
ただ、この場合は態度もちゃんと伴ってないと効果を発揮しません。
口だけで「たまたま〜」と言われても、態度に「わざわざ感」が出てしまっていればあなたはきっと気づくでしょうし、申し訳なさ度は軽くなるばかりか、変な緊張感さえ生まれがちになってしまいます。
いかに相手に変な緊張感を与えないかって場面において、優秀な営業マンほどこの「たまたま」って言葉と「たまたま感」の態度を巧みに演出します。
本当はわざわざ足を運んだとしても、それを出さずに「たまたま〜」と言葉と態度で示せば、聞き手を安心させることが出来ることをちゃん理解しているんですね。
もしあなたが「たまたま / 偶然〜」を使う場合にも、しっかりと態度もセットでご活用くださいませ。
価値を与える「たまたま」例
また、店舗で服や雑貨とか何か商品を見ている時に
みたいに声をかけられた経験はないでしょうか?
この場合は希少性という側面も絡んできてはいますが、商品が本当に昨日入荷したかどうかの実情はどうあれ「たまたま〜」と聞くと、特に惹かれていなかった商品だとしてもちょっと興味が湧いてくる場合も少なくありません。
これはセールスマンやショップ店員がよく使っている手法ですが、
が重なると、人はそのもの自体に価値を感じる傾向にあります。
などもそうですね。
こういった場合も、
- 本当にキャンセルが出たのか
- 本当に1個だけしか残ってないのか
といった信憑性は割と度外視して商品自体に価値を見出しがちになってしまいます。
価値を与える「たまたま」の使い方
意中の相手を食事や映画、遊園地等に誘いたい場合、
などと言って切り出すのが割と一般的な感じではあります。
そこで
ってなると、ちょっと相手は重く受け止めがちになってしまいますね。
そんな時に使いたいのが「たまたま」です。
と誘った方が、商品券やチケットに価値が伴い無駄にするのはもったいないという意識も相まって、相手も良い返事をしてくれる時が多いです。
商品券やチケットは自分で買って用意したものでも全然構いませんし、大事なのは相手の緊張を上手く解くことです。
また、チケット系の場合には、
ってのは逆に怪しまれがちな場合もあります。
その時には、あらかじめ3枚用意しておいて、
って言うと、相手の警戒心は格段に緩くなります。
ちょっと話が逸れてしまいましたが…「たまたま」の使い方の応用ということでご参考までに。。
「たまたま」という言葉の力
使い方によっては人から信用されやすくなり、組み合わせによって安心感や価値を与えることが出来る魔法のことば「たまたま」。
何でもかんでも使うのは逆に警戒されてしまうかも知れませんし、使う時にはタイミングも大切になってきます。
が、逆にやたらと
を使ってくる人が周りにいる場合、もしかしたらその人はあなたに何かしらの意図があって話かけてきているかもしれないので、ちょっと警戒が必要かもしれないですね。