ある時友人から、
と言われたとしたら、一般的な反応としては、
ってなりますね。
10万円を常時財布の中に入れている場合も少ないですし、わざわざATMまで行ってお金を下ろしてくるのもアレですし。。
と返答に困りますが、
と言われると、
という気持ちになりがちです。
譲歩的要請法
上記はあくまでも例えですが、
それはムリだけど、そっちならいいよ
的な回答を引き出すような、
最初に断られるであろう大きな頼みごとをしておいて、予想通り断られた後に本来したかった頼みごとをする
ことで、本来の頼みごとをハードルが下がったような小さな要望に見せる手法があります。
これは心理学的に、
譲歩的要請法
(ドア・イン・ザ・フェイス)
と呼ばれていて、訪問販売員などが門前払い(shut the door in the face)されることを覚悟で、そこからいかにして先方を納得させ商品を販売していくかを表現したフレーズになっています。
この、お互いが譲歩をしていくという行為は、人が潜在的に持つ「返報性の原理」を応用したものだとされています。
返報性の原理
と感じる気持ち(=返報性)が「返報性の原理」と呼ばれています。
「返報性の原理」は、
- 単に「返報性」
- 返報性の法則
とも呼ばれています。
譲歩的要請法の場合は、
相手の頼みごとの度合いが弱くなった
(≒相手が譲歩してくれた)
のだから、こっちもNoって言ってばかりじゃ申し訳ない
(≒返報性)
という気持ちになることを巧みについた手法となります。
譲歩的要請法の効果
前述の、
のような流れの譲歩的要請法は、実際に世界各国で実験が行われており、
[prpsay img=”https://shinritech.com/wp-content/uploads/2019/01/guy.png”]1万円貸して[/prpsay] とお願いする
[prpsay img=”https://shinritech.com/wp-content/uploads/2019/01/guy.png”]10万円貸して[/prpsay] と言って断られた後に
[prpsay img=”https://shinritech.com/wp-content/uploads/2019/01/guy.png”]1万円貸して[/prpsay] とお願いする
といったような譲歩的要請法のナシとアリでは、共通して成功率が約3〜5倍も違ったそうです。
譲歩的要請法の検証実験
また、アメリカの社会心理学者で大学教授でもあったロバート・B・チャルディーニ氏が行なった検証実験でも譲歩的要請法の効果が実証されています。
譲歩的要請法の検証実験同氏は、大学のキャンパスを歩いている学生をランダムに呼び止めて、
と依頼します。
非行少年とは面識もなく特に報酬等も発生しないので、学生からしてみれば全く得にはならない頼まれごとです。
この時OKの返事をした学生は、それでも約17%いたそうです。
次に、再びキャンパスを歩いている別の学生をランダムに呼び止めて、今度は
と頼みます。
非行少年とは面識もなく特に報酬等も発生しませんし、カウンセリングのプロでもなく、室内にこもって初対面の非行少年と話をたとえ毎週2時間とはいえ2年間し続けるという状況に学生たちはさすがに渋ります。
この時OKしてくれた学生は0%だったそうです。
しかし、断られた後に
と重ねて頼みます。
すると、約50%の学生がOKと返事をし頼み事を聞き入れてくれたそうです。
依頼内容の状況的違いに、
- 室内↔外出
- 個別↔公共性
に加えて、
- 学生一人ひとりの考え方の違い
も無視できない要素ではありますが、譲歩する形で要求を下げたことで承諾率が約3倍も違った検証結果となっています。
譲歩的要請法で頼みごとを受け入れてもらいやすくするポイント
譲歩的要請法でYesを引き出すポイントとして、次の5つが挙げられます。
- 頼みごと自体の種類・方向性が合っている
または、離れすぎていない - 頼みごとの度合いは「大→中→小」の順番
- 前振りで使う頼みごとは多くても2〜3回まで
- 譲歩してることが相手にも分かるように伝える
- 頼みごとは時間を空けず続けて行う
基本的に上記4つを抑えておけば、譲歩的要請法で自分の頼みごとを相手に受け入れてもらいやすくなる確率が高くなります。
ちょっと極端過ぎる例えではありますが…上記5つのポイントを抑えつつ、活用事例と交えて見ていきたいと思います。
譲歩的要請法の活用事例
前提条件
本来の頼みごと:
店頭等での「値引き+ポイント倍付け」
例えば、家電量販店なんかでいきなり店員さんに、
と言ってもなかなか難しいです。そこで、
と、軽くふっかけ気味で切り出してみます。
店員
店員
店員
と、全部が全部こんな感じで上手くいくとは限りませんが、「値引き+ポイント倍」の交渉自体は流れとして上手くいく可能性が高いです。
また、先に挙げた譲歩的要請法の4つのポイントと照らし合わせてみると、
頼みごとの方向性
[icon name=”hand-o-right” class=”” unprefixed_class=””] 値引き+ポイント倍付け値引き交渉が基本路線で、あくまで最後の譲歩というかたちで「ポイント倍付け」を提案しています。
家電量販店に限らず、商品販売店などではポイント制度を使って「実質〇〇円」的な値引きニュアンスで使われているので、頼みごとの種類や方向性は合っている(離れていない)といえます。
本来の頼みごとが「値引き+ポイント倍付け」なのに、
といったような無茶ぶりというか、ちょっと意味不明なお願いは、例えお金の話とはいえ「頼みごとの種類や方向性が違う」ことになります。
頼みごとは大→中→小の順番で
値引き交渉が基本路線で、
と金額的に値引き額が下がっています。
前振りは2〜3回まで
[icon name=”hand-o-right” class=”” unprefixed_class=””] 3回譲歩してることが相手にも分かる
[icon name=”hand-o-right” class=”” unprefixed_class=””] 値引き金額は相手の意見を汲んでいる後ほど補足しますが、「譲歩的要請法」なので、こちらが譲歩していることが相手にきちんと伝わっていなくては効果は全くありません。
上の例で言えば、値引き金額に関して
3万円 →1万円
とこちら側がしっかり譲歩しています。
頼みごとは時間を空けず行う
[icon name=”hand-o-right” class=”” unprefixed_class=””] 値引き交渉の流れの中例えば値引き交渉をした次の日に再び店に行って
と同じ店員さんに言ったとしても、店員さん自身の返報性や譲歩的意識は薄れているので効果は期待できません。
譲歩的要請法を活用して値引き交渉をした際には、
あっちの店の方が安くなるかも…
という考えは、却ってお得にならないケースが多いです。
前提条件
本来の頼みごと:
「デートに誘う」
下記は結構極端な例ですが、ニュアンス的参考までに。。
近くに良い温泉もあるし、ちょっとした旅行がてら一緒にいかが?
と言ったとしても、友だちや知り合い関係だと、
となりますね。。
なら、ドライブついでに近郊の紅葉観に行くってのはどうでしょ?
と誘ったとしても車がちょっと特殊な密室空間なのもあってか、割と敬遠される場合も少なくないそうです。
といった流れに敢えてしておいてから、
といった誘い方だと、
となりやすくなります。
泊まりから散歩になったという段階を経ているので、デートするしないという選択肢は結構忘れられがちですし、デートする前提の話に持っていきやすくなります。
これらはあくまでも一例で全て上手くいくとも限りませんが、5つのポイントを押さえた譲歩的要請法を活用すれば、最初から自分の頼みごとを言うよりも、相手に自分の頼みごとを受け入れてもらいやすくなります。
譲歩的要請法は…
譲歩的要請法(ドア・イン・ザ・フェイス)は、頼みごとをする方が先に譲歩しているため、頼みごとをされた相手は、
最初は断ったけど最後は自分で決めた…!
この交渉は私が優位で終了した
という意識も働きやすくなる傾向があると言われています。
つまりは、頼まれた側もある程度の満足感を得られるということです。
なので、
- 目上の方
- 年輩の方
- 先輩
- 上司
- 立場的に上の方
- プライドが高い感じの人
などに割と有効な会話テクニックとされています。
最大のポイントは、
ポイントこちら側が譲歩をしていることが相手にもしっかり伝わるように話を進めていくこと
です。
仮に譲歩が伝わってない場合には、返報性の原理が効きませんし、断るという行為の「一貫性の原理」が働いてしまいますので、くれぐれもご使用にはお気をつけくださいませ。
関連した記事「一貫性の原理」は「段階要請法」と絡めて下記に記載しています。