人間は、良いことにしろ悪いことにしろ、起こった物事に対して何かしらの理由を探し求める傾向が強くあります。
例えば、
- 難しい仕事で上手くいった
- 同期がどんどん昇進していく…
- 自分の給料がなかなか上がらない。。
- 友人に恋人が出来た
- 恋人にフラれてしまった…
- みんなが狙っているあの人とデートの約束ができた!
などなど。
いろんな要因はあるにしても、その結果に対しては自分だけでなく、それを聞いた周りの人も何かとそうなった理由を考える傾向があるということです。
帰属過程
このような自分に納得がいく落とし所を見つける傾向は、心理学で『帰属過程』と呼ばれています。
素朴心理学の提唱者でもあるフリッツ・ハイダー氏によると、帰属過程は大きく分けて4つの考える傾向があるとされています。
ここでは前述に挙げた
- みんなが狙っているあの人とデートの約束ができた!
を共通例としてちょっと深掘りしてみたいと思います。
4つの帰属過程
帰属過程1:能力帰属過程
例えばあなたが「みんなが狙っているあの人とデートの約束ができた」ことを周りに知らせた(知られてしまった)場合、それを聞いた周りの人の心情として、
と、あなたの
- 持って生まれた特徴
- 周囲に認識されている性格的傾向
を理由にして納得しようする受け止め方です。
また、能力帰属過程は割と「自分にはないもの」に対して抱くケースが多いとされていて、
- アスリート
- 俳優、女優
- タレント性の高いこと
に対してよく抱かれる心情と言われています。
など、その人の努力云々等を抜きにして考えられるのも能力帰属過程の特徴のひとつだとされています。
帰属過程2:努力帰属過程
あなたが「みんなが狙っているあの人とデートの約束ができた」ことを周りに知らせた(知られてしまった)場合の、周りの人が抱く別の落とし所として、
と捉えるパターンもあります。
良い意味でも悪い意味でも捉えられがちですが、能力帰属過程では見落とされがちな「努力」の部分に焦点を当てて自分を納得させるものです。
といった行動に対して向けられる納得心が努力帰属過程に当たります。
帰属過程3:難易度帰属過程
「みんなが狙っているあの人とデートの約束ができた」として、そもそも
といったような、あなた自身にではなく相手側にフォーカスされた捉え方です。
難易度の度合いは人それぞれ変わってきますが、どちらかというと「それは簡単だから」的な容易な方に見積もっている場合が多い傾向があり、納得しやすいものだといわれています。
などと考えて自分を納得させるのが難易度帰属過程の例として挙げられます。
帰属過程4:運帰属過程
あなたが「みんなが狙っているあの人とデートの約束ができた」のは、
といったような、一種の神頼み的な捉え方です。
みんなが狙っているあの人が、たまたま恋人と別れたタイミングでそれを知らずに声かけたのかもしれませんし、仕事でミスして落ち込んでいた時だったのかもしれませんし、気分的な問題だったのかもしれません。
いづれにしても、あなたがデートの約束できたのは「ラッキー」だったと捉える心情が運帰属過程になります。
帰属過程の面白いところ
人間には物事に対して何かしら理由をつけて納得する傾向があり、納得の仕方には大きく分けて4つパターンがあることを紹介してきましたが、この帰属過程の面白いところは、
物事の当事者と聞き手側によって、納得の仕方に大きな違いがある
ことです。
あなたが「みんなが狙っているあの人とデートの約束ができた」場合、その原因は能力や努力といった自分の力にあると考える傾向が強いことに対して、
友人から「みんなが狙っているあの人とデートの約束ができた」と聞いた場合、その原因は難易度や運といった外部的要因があったからだと捉える傾向が強いとされています。
また、例として挙げた「みんなが狙っているあの人とデートの約束ができた」のは、割とポジティブな出来事として捉えることが出来ますが、これが
といったちょっとネガティブな出来事の場合には、
原因の納得の仕方がポジティブな出来事の時と真逆になる傾向が強くなります。
例えば、あなたが「あの人にデートを申し込んだけど断られた」場合、その原因は、
- はじめから高望みだったからな…
:難易度帰属過程 - タイミングが悪かったんだ…
:運帰属過程
等に求める傾向があるのに対して、
友人から「あの人にデートを申し込んだけど断られた」と聞いた場合には、
- 身の程知らずだなー
:能力帰属過程 - 一回誘ったくらいじゃダメだよ
:努力帰属過程
といったような、その人の能力や努力が原因だったと考える傾向が強くなるそうです。
帰属過程の使い方
物事が、
自分に起こった良いこと
- 能力帰属過程
- 努力帰属過程
が原因だったと捉える傾向があり、
- 難易度帰属過程
- 運帰属過程
に原因を求めがち。また、
- 難易度帰属過程
- 運帰属過程
が原因だったと聞き手は捉える傾向にあり、
- 能力帰属過程
- 努力帰属過程
が原因だったと捉える傾向が強い、と大まかに分けて4つのパターンがあります。
このことを踏まえた上で、周りの人に悪いことが起こった時の励まし方をちょっと変えるだけで、あなたの好感度も飛躍的に上がる可能性があります。
好感度が上がる励まし方
例えば、周りの人に悪いことが起こってしまった場合、聞き手は、
- 能力帰属過程
- 努力帰属過程
が原因だと考えがちですが、当の本人は、
- 難易度帰属過程
- 運帰属過程
にその原因を求める傾向があります。
その時にもしあなたが、
といったような、
- 能力帰属過程
- 努力帰属過程
に焦点を当てた言葉をかけたとしても、当事者にとってはあまり慰めにはなり得ません。。
当の本人的は、
- 難易度帰属過程
- 運帰属過程
に原因を求めがちになりますので、
といったような、
- 難易度帰属過程
- 運帰属過程
に焦点を当てた言葉をかけてあげると、当の本人が考えていた良くないことの原因とマッチしやすくなります。
良いことでも良くないことでも、自分に起こったことのように考えたり言ってあげることが大切だって言われる所以ですね。
また、人は自分の考えと近い言葉をかけてくれた相手に対しては自然と好感が増しますので、周りの人に良くないことが起こったとき、適切な言葉をかけてあげることであなた自身への好感度も自然と増していきますし、信頼度もアップする可能性があります。
全てにおいてこの帰属過程を踏まえた励まし方であなたの好感度が上がるわけではないですが、4つの帰属過程を踏まえた励まし方を知っていれば、いい関係性が築きやすくなるひとつの機会でもあると思いますので、ご参考までに。
この記事のおわりに
起こったことにに対して何かしらの理由をつける傾向が人間にはあり、それが
- 自分に起こったこと
- 周りの人に起こったこと
によって受け止め方の傾向が違ってくるという内容の「帰属過程」。
さらには、
- 自分に起こった良いこと・良くないこと
- 周りの人に起こった良いこと・悪いこと
でもそれぞれ考え方が違ってくるという内容でした。
この帰属過程の違いを知っていれば、状況に応じて周りの人へ掛ける言葉も違ってきますし、素敵な人間関係を築いていく上での大切な要因のひとつでもあると思いますので記載してみました。