漫画喫茶などで、好きな漫画を1巻から読み進めて続きを持ってこようとしたら、5巻だけないことに気づきます。
たとえその漫画を何回も読んでて、5巻の内容をだいだい知っていたとしても、読みたくてしょうがなくなった…
また、昨日夕食を作るためにスーパーに寄ったことは覚えていても、何を作ったかすぐに思い出せない…
なんてことあったりしませんか?
これは、人は終わった作業のことはすぐに忘れても、継続中や未完了の作業のことに関してはなかなか忘れることができないという心理作用が働くためと言われています。
ツァイガルニク効果
このような心理作用は『ツァイガルニク効果』と呼ばれていて、
人は達成できたことよりも、達成できなかった事り中断している内容をよく覚えているという心理的現象
のことを指します。
memo
- ツァイガルニック
- ゼイガルニク
- ゼイガルニック
とも呼ばれたりしています
ツァイガルニク効果とは?
漫画喫茶の例でいえば、読み始めた漫画は全部もう一回読みたい!(≒未完の状態)のに、諦めて帰ったときには「5巻読みたい…!」という気持ちが強く残ったり、
スーパーの話であれば、その日の夕食を作ったこと(完成されたこと)よりも、スーパーに寄ったこと(夕食作りの過程)の方を覚えている…
ってのが『ツァイガルニク効果』の一種だとされています。
ちなみに、
- 夢中になっている度合いが大きい場合
- 終わりが近づいていると認識できてる状態
などでは、『ツァイガルニク効果』がより強く心理面に影響を与えるとされています。
ツァイガルニク効果の実験
ツァイガルニク効果は、心理学派のひとつであるゲシュタルト心理学者の
- クルト・レヴィン博士
- ブルーマ・ツァイガルニク博士
によって提唱されたもので、ツァイガルニク博士の行きつけだったレストランのウエイターが
[prpsay img=”https://shinritech.com/wp-content/uploads/2018/06/marugata.png” name=”ウエイター”]運ぶ前の注文はいくらでも覚えていられるのに、一度運んでしまうと- 何を注文されたのか
- どのテーブルに何を運んだのか
まったく思い出せない[/prpsay]
と言っているのを耳にしたことから始まったそうです。
ここから博士は、
未完了の作業は完了した作業よりも記憶に残る
という仮説を立てました。
そこで、自身の仮説をさらに深めて、
目標に向かっている最中には緊張感が生まれるが、目標が達成されると緊張感は解消する
という内容の検証実験を行っています。
ツァイガルニク効果の検証実験
検証では、
という2つのグループに分けて、それぞれ簡単ないくつかの作業を行ってもらうものでした。
全ての課題が終わった後に
博士
とごく簡単な質問をしました。
すると、行った作業を正確に答えられた被験者は、課題を中断されたBグループの方が、Aグループよりも約2倍も多かったそうです。
また、博士は、視覚的実験も行っており、
A画像
完成された図形
B画像
未完成の図形
※ 画像はイメージです
では、
どちらの方がパッと見て記憶に残りやすいか?
という検証も行っています。
その結果、「未完成の図形」の方が「完成した図形」よりも記憶や印象に強く残ることを突き止めました。
例えば家や職場の近くで「ああ、あそこ工事してるな」と記憶に残っても、もともとそこに何があったかはっきり覚えてなかったりするのも一種の『ツァイガルニク効果』だと言えます。
ツァイガルニク効果の影響力
ツァイガルニク博士の実験にはさらに続きがあり、作業を強制的に中断させられたBグループの人たちに対して、全ての課題が終わった後に、
博士
と言ったところ、グループ内の約80%以上もの人が、中断された作業を再開したそうです。
つまり、未完了の作業は完了した作業よりも約2倍近く記憶や印象に残り、しかも、人は未完了のものを達成したいという衝動にかられるということもこの実験から分かったと博士はまとめています。
ツァイガルニク効果の使われ方
今はちょっと敬遠されがちになってますが、TV番組やCMなどで、
なんてのは、典型的なツァイガルニク効果の活用例です。
また、テレビドラマなども、各回の終わり間際に急展開を迎えて「え?この後どうなるの?」と続きが気になる気持ちにさせます。
これもツァイガルニク効果を活用した一例ですし、映画の話よりもドラマの話の方をよく覚えているのは、一気に見終わってしまう映画よりも、週ごとに放送されるドラマの方が続きが気になる回数が自然と多くなっているためでもあります。
ツァイガルニク効果の活用方法
対人関連
ツァイガルニク効果はあなた興味を抱かせるテクニックとしても非常に有効です。
というのも、「終わりよければ全て良し」ではありませんが、去り際や別れ際にこのツァイガルニク効果が大きな効力を発揮してくれる可能性を秘めているためです。
例えば、気になる人と食事をしに行った時や、時間が限られた商談などの際には、あえて終わりの方に相手が興味持つような過去の恋愛話や相手にメリットのある話をするように心がけます。
そして、
などとあえて話を区切って別れると、相手は、
といったような心理作用が働き、話が気になっているという気持ちがあなたのこと自体が気になると誤認されやすくなる傾向があるので効果的です。
ツァイガルニク効果の使用上の注意
いつも上記のように上手くいくとは限りませんが、ツァイガルニク効果は自分の印象を良くする上でも非常に有効な方法ではあります。
が、大きく分けて2つのデメリットもありますので使用にはお気を付け下さい…!
効果は短時間
ツァイガルニク効果は、別れ際などで敢えて自分から幕引きを切り出す手法となります。
相手がもし、
続きが知りたい!
という気持ちになったとしても、よっぽど興味を惹かれるような内容ではない限り冷めるのも早いです。
時間が経ち過ぎると効力を持続できません。。
なので、自分から話の幕引きをした後には、次会う約束を割と近い未来に取り付けておくことがポイントとなってきます。
繰り返し使えない
ツァイガルニク効果は、言い換えると「未完の状態を作り出す」ことがキーとなります。
ただ、話が途中で終わることが毎回続くと相手は却ってストレスになりますし、あなたの印象自体が悪いものになってしまいます。。
TVなんかで「CMあとすぐ!」と言いつつ、何回も小刻みにCMが入ったりして引き伸ばされるとイラッとするのに近い感覚です。
なので、ここぞの場面であったり、次も会う約束を取り付けたい場合などに使うのが効果的と言えます。
ツァイガルニク効果の対人活用ポイント
- 効力は短時間しか保たない
:次に会う約束を取り付ける際に活用する - 何回も使えない
:連続使用はかえって逆効果になってしまう恐れがあるためNG
勉強・仕事関連
日々の仕事だったり受験等の勉強だったりで、
モチベーションの継続が難しい…
という場合にも、ツァイガルニク効果が有効な解決策のひとつになるかもしれません。
前述したツァイガルニク博士の検証実験において、
- 作業を途中で中断された方が記憶に残りやすい
というのと、
- 人は未完了のものを達成したいという衝動にかられる傾向がある
ということが検証結果として挙げられていました。
この効力を自分に向けて上手く活用していきます。
あえて途中で終わらしてみる
今日ここまでは終わらせたい…!
とか、
この区切りのいいとこまでやりきろう
とか、自分の中で目安となる区切りを設けているとしたら、その一歩手前であえてやめてみることでツァイガルニク効果の
- 途中で中断された方が記憶に残りやすい
- 未完了のものを達成したいという衝動にかられる
という効力が発揮しやすくなります。
作業を途中で終わらせたことが記憶に残りやすくなり、且つ、途中だった作業をやりきろうとする心理的効果も生まれてきます。
そうなると次の日、より自然に作業に取り組みやすくなりますし、作業をしてしまえばモチベーションはある程度後からついてきたりもします。
期日が差し迫ったものには活用しづらいですが、例えば当サイトの記事を書くにあたって、
できれば1日1記事ペースで書き終わらせたいな
という思いで進めていたんですが、ツァイガルニク効果を知ってからは、次に記載しようとしてることの大まかな内容だけを下書き保存して、書く作業を途中で止めるようにしてみたんですが、
以前よりは
記事書かなきゃ…
的なちょっと重たいネガティブな気持ちは軽くなったように感じています。
加えて、ちょっと前は記事書き始める前にパソコンで全く違うもの見てたりとかしてたんですが、今はパソコン開いたら割とすぐ続き作業を開始できていて、取り組む意識的なものに積極性が増してきてるようにも感じています。
と言うつもりはありませんし、そうは思いませんが、多少なり影響している部分はあると思うのでご参考までに。。