男女問わず相手から好意を得たい場合、最も簡単で有効とされる方法は、
相手に見返りを求めない小さな親切をすること
です。
親切の度合いは人によって違ってきますが、
- 重くない
- (金銭的に)負担を感じない
- (回数的に)過度にしない
- 見返りを求めない
親切をされたことで、感謝の気持ちに加えて
自分もお返しをしないとちょっと申し訳ない
という気持ちが働きやすくなり、上記のような気持ちが働くと
- 記憶に残りやすくなる
- 自然と好感を持ちやすくなる
と言われています。
最近ではちょっと主旨が逸れてきてしまっている感はありますが、バレンタインは最も典型的な例で、
という心理が働くものです。
返報性の法則
上記のような、
何かしてもらった時に自分も何かしないと申し訳ない
って気持ちになる心理作用は「返報性の法則」と呼ばれています。
童謡『鶴の恩返し』が代表的な例ですが、自分にとって何か嬉しいことをしてもらった時にそれと同等かそれ以上のお返しを相手にしてあげたい気持ちになるのは、ある意味自然なことだとも言えます。
この、「自然なこと」ととして無意識で起こるお返しの感情が「返報性」です。
返報性の法則とは?
ただ、心理学術的に言われている「返報性の法則」が発動するのは、恩を受けた時や嬉しいことをしてくれた時だけではありません。
大きく分けて下記の4つのパターンがあるとされています。
返報性が起こる4つのパターン
好意
自分が受けた好意を返したくなる気持ちです。
FacebookやInstagramなどのSNSで「いいね!」を押してくれた相手の投稿にも「いいね!」を押す行為は、好意の返報性と言えます。
敵意
自分が受けた敵意や反発を返す気持ちです。
FacebookやInstagramなどのSNSで、自分の投稿に「いいね!」を押さない相手の投稿には、自分も「いいね!」を押したくないと感じるのが敵意の返報性です。
譲歩
相手が譲ってくれたことに対して、
自分も折れなきゃ…
と感じる気持ちです。
例えば同じ友人たちと食事をするときなどで、
みたいなのが譲歩の返報性に充たります。
自己開示
ちょっと人前では言いづらいことを打ち明けてくれた時に、
自分も打ち明けようかな…
と感じる気持ちです。
相談事や悩みごとを打ち明けてくれた相手に対して、自分のことも話す…といったのが自己開示の返報性になります。
自己開示の返報性は、
というちょっとした特別感を感じやすいため、打ち明けてくれた相手に対して特に好感が持ちやすくなります。
このように返報性には大きく分けて4つのパターンがありますが、好意を受けたときだけではなく、敵意を受けたときにも返報性は起こりやすくなります。
また、好意や敵意といったことは受け手によって感じ方が異なるため、無意識の内に相手を傷つけるような言動をとってしまうと好感は持たれづらく逆に敵意を抱かせてしまいますので、特に好意を得たい相手には注意が必要ですね。
返報性の実験
相手から好意を得るのに返報性がいかに有効かが分かる実験で、心理学者のデニス・リーガン氏が行った「美術鑑賞実験」というものがあります。
美術鑑賞をして絵画の評価をして欲しい
という主旨で集まった学生を2人1組のグループに分けていきます。
ちなみに、2人1組になった片方はリーガン氏が用意したサクラです。
実験の本当の狙いは、
美術鑑賞の途中に設けられる休憩時間でのサクラの行動によって、その後の学生の行動にどのような変化が起こるか
を図るものでした。
パターン.1休憩時間にサクラが室外に出ていき、自分だけの飲み物を買って戻ってくる
パターン.2休憩時間にサクラが室外に出ていき、もうひとりの分の飲み物も買って戻ってくる
と違いをつくり、全ての絵画の品評が終わった後でサクラが学生に
と、もうひとりにお願いをします。
返報性の効果
チケットの購入枚数を買ってくれた人別に調べたところ、「ジュースを買ってきてくれた」という親切をされた学生(パターン2)は、特に親切をされなかった学生(パターン1)に比べて、約2倍も購入してくれていることが分かりました。
この結果、ジュースを買ってきてくれた方の学生は明らかに借りがあると感じる傾向がみられ、金額で比較するとジュースの数倍はするチケットを買ったことになります。
返報性が効く範囲
また、上記の実験では、
一緒に美術鑑賞をした相手の印象はどうだったか?
という好感度も調査しています。
親切にされたこととは無関係で、サクラに対する好感度が高いほど、チケットを買った枚数が多いことが分かりました。
しかし、親切にされた場合、好感度とは無関係でチケットを購入した学生が増えていることも分かりました。
サクラに対する好感度は低くても、親切にされたことでサクラに対する好感度が高い人とほぼ同じ枚数分チケットを購入している結果となったのです。
これは、
親切にしてくれたからこっちもお返しをした…
(ただしイケメンに限る)
的なことではない裏付けとも言えます。
親切を受けた側は、親切にしてくれた相手が好きか嫌いかどうかは関係なく「恩を返そう」とする心理作用が働くということですね。
返報性の使われ方
スーパーなどで
スーパーなどの一角で「試食コーナー」が設置されているところは多いですが、この試食も返報性を上手に使用している例です。
という一種のダブルバインド効果の応用とされる、購入するかどうかではなく、購入したことを前提にその後をイメージさせる効果と、
タダで食べさせてもらって悪いな…
という返報性の法則が効いています。
ダブルバインドに関する記事
Webサービスなどで
スーパーのように実商品を試せないWeb上でよく展開されている返報性の法則を用いた事例が、
- 初回無料
- 加入1ヶ月無料
- 返品交換無料
といったサービスです。
無料だし試してみるか
という気持ちから
無料で利用したからもうちょっと使ってみるか
と変わり、気付いたら何度も利用していたりだんだんと退会する意識が薄れていく効果があるとされています。
…が、最近では割と見慣れた手法になってしまっているため、当たり前感があり返報性の効力は薄れつつありますが…。
返報性の使い方
例:値引き交渉
これは特に電化製品を取り扱う店に多い傾向がありますが、雨の日に家電製品を買いに行くと値引き交渉がしやすくなると言われています。
雨の日は客足が遠のくため店側からすれば売り上げが落ちますし、
雨の日にせっかく来てくれたのだから…
という一種の理由付けではありますが、普段よりもより大きな金額を値引きしてくれることも返報性の法則のひとつと言えます。
また、この時に譲歩的要請法とされる「ドア・イン・ザ・フェイス」を併せて活用すれば、より大きな効果が期待できそうです。
譲歩的要請法(ドア・イン・ザ・フェイス)に関する記事
例:対人関係
返報性の法則を最大限に活かしたい場合、
ポイント
- 見返りを求めないこと
- 重すぎないこと
- (金銭的に)負担を感じさせないこと
- (回数的に)過度にしないこと
の4つを踏まえた「小さな親切をする」ことです。
というあからさまな見返りを求める態度や、相手にそう感じさせてしまうような物言いでは、却って相手は身構えてしまいます。
また、
(こんなにしてもらって)悪いな…
という気持ちが強すぎると、相手に心理的なストレスを与えてしまい逆に警戒される場合もあります。
なので、
BAD
- 知り合ってまだ浅い段階から凝ったお弁当を用意するとか、
- 付き合ってもないのに高級ブランドのバッグを上げるとか、
- 毎日何かしらの仕事を自分から手伝いにいくとか、
ではなく、
GOOD
- 仕事を頑張っている姿を見ている場合にはジュースを渡す
- 寒そうにしていたら、ホッカイロをあげる
- 暑そうにしていたら、団扇でさりげなく扇いであげる
などの小さな親切で充分です。
返報性の法則は…
相手から好意を得る最も簡単な方法として返報性の法則をみてきましたが、活用する場合には、
ポイント
- 見返りを求めないこと
- 重すぎないこと
- (金銭的に)負担を感じさせないこと
- (回数的に)過度にしないこと
の4つをあくまで親切心を持って行うことが大切です。
情けは人の為ならず
という言葉は、しばしば
[note title=”誤解釈”]親切にするのはその人のためにならない
[/note]的な誤訳で用いられる時もありますが、本来の意味は、
[safe title=”正解釈”]人に対して行った好意は巡り巡って自分に戻ってくる
[/safe]という意味の言葉です。
返報性も、その効果を狙って使用するよりも普段の小さな親切の積み重ねが結果的に大きな効力を発揮することに繋がるものだという考え方もありますので、狙いすぎにはくれぐれもお気をつけくださいませ。